「自分のプライドのためにつくってるんだよね。」

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今、銀座店ではキャベツが人気だ。

キャベツの産地としては、関東では、千葉や神奈川が有名だが、りょくけんでは、この時期、そのどちらの産地でもない。もともと、キャベツの原生地はドーバー海峡や地中海沿いの地域で、海の近くだ。潮風を好み、日本の名だたるキャベツの産地も海沿いが多い。

愛知・豊川。日本で最もキャベツを栽培しているのは、実は愛知だ。そこに、長年お付き合いしている農業経営者 入倉智信(いりくらひろのぶ)さんが居る。70戸の農家を従え、キャベツや白菜、とうもろこしを栽培。農業論について語るのが好きで、特にキャベツのこととなると、話が止まらない。

入倉さんの作るキャベツの中でも「あまだま」は別格だ。病気に弱く、収穫適期が短い。従って、収穫量も、他のキャベツに比べ少ない。「本当は、消費者に届くころには600円くらい頂かないと、割りに合わないんだよね。」というくらい、効率の悪い品種だ。

だが―。それでも作る。作りたいと思えるキャベツだ。

一般に、キャベツには二回の旬があると、世間では言われる。すなわち、春と冬だ。だが、私は、絶対に「冬」のほうが美味しいと思う。誰がなんと言おうと、キャベツの旬は冬だ。冬のキャベツが、春のキャベツに劣るとすれば、それは「やわらかさ」だけだと思う。ところが、この「あまだま」。冬キャベツにもかかわらず、とてもやわらかい(それゆえに、病気にも、虫にも弱い…)。糖度も最高で16度くらいになる。銀座店厨房のシェフも、このキャベツに惚れ込み、何かこれを生かしたデリカを、と考え出したのが、「あまだまキャベツのまるごと塩つけもの」だ。3%の塩水に一晩、まるごとキャベツを漬け込む。ただ、それだけ。「あまだまは、そのまま食べるのが美味しい!」それが彼の出した結論だった。

一口に「あまだま」と言っても、本当に純粋のあまだまを栽培できるのは、実は、ほんの2週間程度。それ以外の時期は、あまだまから生まれた別の品種を上手にリレーして、11月末から2月中旬くらいまで連続出荷できるように努める。

「儲からない」と言って、今では「あまだま」を作る農家はとても限られる。

入倉さんは言う。「儲からないけど、これは、自分のプライドのためにつくってるんだよね。」伊吹山から吹き降ろす冷たい風がぴゅ―ぴゅ―と打ち付ける中、入倉さんがとっても素敵に見えた。

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■あまだまキャベツ  1玉 347円(税込)  1/2玉 189円

■あまだまキャベツのまるごと塩つけもの  1カット 315円(税込)

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