明野のレタス。

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「あっちに八ヶ岳、こっちに甲斐駒※。向こうには富士山。―今日は見えないけど…。いくつかある圃場の中で、ここで作業するのが、オレも一番気持ち良いよね。」

佐野さんが笑った。

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韮崎インター付近で、すでに標高は300m。そこから、車でどんどん進んでいくうちに、どんどん標高は上がり、600m~800mになる。突然、赤松の森が終わると、視界が広がって、見渡す限りの赤土の大地が現れる。ここが、「明野(あけの)」。

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最初に訪れたのは昨年の7月だった。お目当てはじゃがいも。赤土でとれるじゃがいもはうまい。それは、会社のある浜松の三方原でも実証済み。赤土の産地で、じゃがいもを産地リレーしたいと画策していたのだ。

ほぼ当てもなくさまよい、作業している農家さんにヒアリング。「うちは除草剤使うから。」「うちは、そんな規模ないよ。」etc. 幾度となく断られながらも、その陽の向きや、夕方まで明るい日照時間の長さ、程よい斜面※、赤土の色合いと感触に、正に惚れ惚れしたものである。

レタスの作付けをお願いしている長野 川上村からすぐのところにあるので、その後も、何度か寄ったが、残念ながら、今日までお取引には結びつかなかった。

そんな徘徊がようやく実を結び、佐野さんと言う篤農家と出会うことができた。 

レタスを、のべ26ha※作付けする大規模農家だ。

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もともとは、農協に勤めていてたという。専攻は、畜産だったが、普及員※の有資格者だったために、営農指導員※に転向、11年勤め上げた。独立したいと思い、大泉※の民間農場で修行し、12年前に、独立を果たした。今では佐野さんを慕って働きに来る若手も多い。14~28名ほどの大所帯だ。

「清里や大泉も良かったが、これからやるなら、明野だ、と思ってね。」

普及員時代に沖縄にレタスを導入したことや、大泉での修行時代の話を伺った後、いくつかある畑を見回った。

どこもそこも、美しい。

大自然の中で、レタスがキラキラと輝いている。

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「これはちょっと出来すぎだ。これはちょうど良いかな。」といくつか畑のレタスを触った後、さくさくとクリスプな音を立てて、収穫。そのまま半分に割って、差し出してくれた。

「食べて良いっすか?」

中心部に近いところを、手でガッツリとって、ほおばった。

「美味しい…!」

甘みがあり、食感もちょうど良い。

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「除草剤は使わない。嫌いだから。

肥料分をちゃんと消化するように、僕は酵素は、少し使っている。」

レタスほど、肥料過多の分かりやすい野菜は無いと私は思っている。中心の「芽」の部分を食べれば一食瞭然。苦味を感じれば、アウトだ。

風光明媚な、明野に後ろ髪をひかれつつ、帰途に着いた。

ほおばってしまった残りのレタス。どうしても、妻に、その日の内に食べさせたかった。自宅に着くとすぐ、水洗いし、おもむろに手でちぎり、冷水に浸し、ボウルのまま、野菜室に入れた。

15分位した後に、食卓にサーヴ。これがまた…。 美味しい!

あれよあれよ、とお皿三杯分を二人で平らげてしまった。

美味しい ってやっぱり良い。

■レタス 山梨県産 1玉 399円(税込) ~7月上旬

※甲斐駒 …甲斐駒ケ岳(かい こまがたけ)のこと。地元の方からは親しみをこめて、そのように呼ばれている。日本アルプス屈指の名峰で、半ば独立しているように見える標高2967mの山。山梨県北杜市と長野県伊那市にまたがっている。

※栽培面積 26ha …二期作を行うので、実際の面積とは異なる。 ※斜面の特徴は、水はけが良いこと(=稜線に沿って水が下に流れていくため)と、日当たりが良いこと。手入れは大変だが、高食味の野菜、くだものが収穫できる。

※普及員 …正しくは「普及指導員」。国家資格で、試験に合格する必要がある。農家に対して、技術指導や、販売指導を行う。

※営農指導 …数多くの農協の仕事の中でも、主要となるべき業務のひとつ。組合員(=農協に所属している農家)に対して、農業技術の向上や、農業経営の指導を行う。組合の中の組織化なども実施。多くの営農指導員が、普及指導員の有資格者。

※大泉 …山梨県北杜市大泉町。明野と隣接する。



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